落語の旅人、庭乃雀でございます。
早いもので今年も本日限りとなりました。
もう少し寒くないといまいち気分がピリッとしません。
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関西では随分と暖かい冬が続き、
昔のような冬の風情を味わうことができずにいます。
寒さでお布団から出るのに勇気がいったり、
頬も耳も痛くなるほどに冷たい空気。
吐く息の白さ。
朝起きるとやけに窓の外が明るくて、カーテンを開くと
一面の銀世界! 雪にテンション上がる上がる♪
と、少し前まで冬とはこんな感じだったはず。
昨今雪もとんと見ません。
せっかく四季のある国なのになあ。
季節にメリハリがなくなっていくことに少々危機感を感じる
今日この頃なのでございます。
チュンチュン
本日のお題は、『除夜の雪』
たぶん島ノ内あたりの小さなお寺が舞台です。
冬の情景の表現が素晴らしく、
雪がしんしん降る夜にちょっと悲しいお噺です。
さてさて
寒い寒い大晦日の夜、除夜の鐘をつくために
三人の修行僧が庫裡に詰めております。
囲炉裏の火を囲んで兄弟子の大念が弟弟子の悦念、珍念に
和尚の悪口やら、寺での魚の焼き方やらを伝授していると、
伏見屋の若御寮人さんが借りていた提灯を返しにやってきます。
どうしても年内に返したいと、降りしきる雪の中やって来たのです。
若御寮人さんは若旦那さんに見初められお嫁に来られたけれど、
貧しい家の出だったので、身分違いだとお姑さんにいびり倒される辛い日々。
若御寮人さんが帰って行った後、気の毒なお方やと三人が話していると、
誰もいないはずの本堂から鉦の音が・・・
こういう時は檀家で誰かが死んだ時。正月早々葬式やなあと兄弟子の大念が言います。
境内はびっしり雪が積もって一面なにもない真っ白。
そこで伏見屋の若御寮人さんの足跡もない事に気付き、三人はふるえあがります。
やがて、伏見屋の番頭の藤助さんがやって来て
今しがた若御寮人さんが首をくくって亡くなった事を知らされます。
除夜の鐘が鳴ってます。悦念と珍念が打つ鐘の音です。
「若御寮人さんが、不釣り合いな縁は組むもんやないと教えてくれてはる気がするわ」
「なんでだんねん」
「あれが釣鐘、ここに提灯」
チュンチュン
サゲは『釣鐘に提灯』という諺からですね。
釣鐘と提灯は形は似ているけれど大きさや重さが全く違うことから
差が大きくて釣り合わないという意味です。
【本日のよもやま】
小さなお寺の大晦日の様子がよくわかるお噺です。
凍てついた冬の空気が伝わってくるような、聞いてるだけで寒くなってきます。
怪談噺ではあるけれどしんみりじんわり心にしみる短編という感じで、
なんとも味わい深い好きなお噺です。
庫裡での三人のやりとりに、落語らしい笑いがあります。
末弟の珍念は入門してまだ三ヶ月というのに、要領よく気がきいていて、
寒い庫裡で少しでも快適に過ごせるよう、和尚さんの部屋からいろいろ
持ちだして、兄弟子大念はびっくりするやら喜ぶやら。
勢い良く長持ちする堅炭、お煎茶の玉露に丸干し。
和尚さんの丸干しを持ってきた珍念に、ようやった!
さてその丸干しの焼き方ですが、お寺で魚を焼いていることがバレたら不味いので
ちゃんと焼き方というものがあるんだそうで、そのニオイを出さずに焼く方法を
弟弟子たちに伝授してさっそく食します。
お布施を包む、なるべく分厚い和紙で丸干しを包みます。
水に浸してぎゅっとしぼり、囲炉裏の炭火の上にポイ。
炭火蒸し焼き状態です。ニオイも出ず、美味しく食べられるという次第。
紙を開くと湯気がたちのぼり、ほくほくの丸干しを食べるところ、
めちゃくちゃ美味しそうです!
試してみたくなりました。
お布施を包む和紙のかわりに懐紙でいわしの丸干しを包み、
コンロを遠火の中火にして焼くこと5分ほど。
なるほどニオイは少ないようです。火が燃え移ることもなく美味しそうに焼けました。
食べてみるとうま〜い!
気のせいなのか、本当なのか、いつもよりおいしさ2倍増しぐらいになってます。
米朝さんのおかげで、美味しい焼き方を会得できました。 チュンチュン
もうそろそろ今年も終わります。
2016年エンディングは、丸干しの蒸し焼きを肴に焼酎のお湯割りを飲みながら
除夜の鐘の音をきくとしましょうか。
完全におっさんやん。