落語の旅人、庭乃雀でございます。
9月3日、4日は『彦八まつり』でした。
毎年9月の第一土曜、日曜に生國魂神社を舞台に開催される
落語家さんによる大文化祭みたいなものです。
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江戸時代、生玉さんの境内にはたくさんの小屋が並び、
様々な大道芸人が集まって芸を競い、人々を楽しませておりました。
なかでも米沢彦八という芸人さんは『当世仕方物真似』という看板を掲げ、
当時の大名の物真似でおおいに観客を沸かせておりました。
この方こそ、後に落語の始祖となり名を馳せることになる
初代米沢彦八さんでございます。
境内、本殿の横に碑があります。
彦八さんの功績と上方落語をもっと世の中に広くアピールする目的で
石碑が建立された平成2年9月5日(六代目松鶴さんんのご命日)に始まり、
今年で26回目。毎年気になりつつも行きそびれ、今年こそはと
3日土曜日に行ってまいりました。
まだまだ暑い大阪。
境内では落語家さんたちの活気あふれる熱い屋台が立ち並んでいます。
暑い熱い生玉さんの境内。
何箇所かに設置された超強力なミストシャワーがうれしい!
色とりどりのラブホ街を通りぬけ、生玉さんに到着したのが12時ごろ。
13時開演の奉納落語会のチケットをまずはゲットしなければ・・・
と、本部テントに急ぎましたが、すでに完売。
なんてあさはかなんでしょう。当日の1時間前に残ってるはずありませんでした。
ううう〜来年はちゃんと前売り買っとこうと固く心に誓った雀なのでした。
ショックな気分がおさまると、急にお腹がすいてきました。
気が付くと境内は美味しい匂いでいっぱい!
直ぐ側の屋台は、五代目文枝茶屋。弟子が必ず頂いた師匠特製の焼きうどん。
『食えない時代にうどん一玉をどうやっておいしく食べよか考えて生まれた一品』
師匠が作ってくれたなら、弟子にとってはなんでもご馳走に違いありません。
細うどんを鰹だしの素で炒めて、醤油をたらり、その上に目玉焼きがのせてあります。
薄味かと思いきや、しっかり味がついていて美味しかったです。
坊枝さんが汗だくで作ってくれました。ごちそうさまでした。
パーン! 何やら境内で爆発音。何事!?
と、思ったら『代書でポン』雀三郎さんの屋台のポン菓子が弾ける音でした。
わあ、きん枝さんがイカ焼き焼いてはる〜
福笑さんのブースは“チョーズ・バイ・サイド” なるほどトイレの側ですもんね。
たまちゃんが『噺家神経衰弱』に興じてくれます。
福笑さんはブース内で飲んだくれてます。(≧∀≦)
塩鯛さんの屋台は特製塩鯛焼きが美味しそう!
あーりょうばさんが!
小米さんかと思いましたよ。枝雀さんの面影にじ〜んとしてしまいました。
舞台では、噺家さんによる住吉踊りやら、山車囃子。ゲームにクイズに盛りだくさん。
高津の富ならぬ生玉の富は空くじなし。
なんと上位6等までが有名温泉旅館のペア宿泊券という太っ腹!
雀ももちろん買いました。1枚500円で運試し。結果は・・・
3等にニアピン! 百の位がす、すれた〜 下一桁があって24等でございました。
楽しい時間はあっという間にすぎるもの。
こんなにたくさんの落語家さんたちと近く触れ合える機会はめったにありません。
ええお祭りやなあ。
大阪の酷暑もなんのその。美味しいうれしい一日でありました。
チュンチュン
さてさて
今回は4日の奉納落語会での、ざこばさんのお題『一文笛』をご紹介したいと思います。
米朝さんが三十代の頃作った創作落語だそうです。
秀という腕利きのスリがおりました。
今は引退している兄貴の長屋へ行ったおり、長屋の角の駄菓子屋で
子供たちが集まって、今入荷したばかりの一文笛で面白そうに騒いでいます。
その子供たちから少し離れてその様子を見ている貧しい子がひとり。
楽しそうな子供たちの声に誘われて、自分も近寄って笛を手にしますと、
駄菓子屋の婆から「銭のない子は帰れ」と罵倒されます。
それを見ていた秀はカッとなり、笛の一つを抜き取り、子供の袖に放り込んでやります。
秀にしてみれば良いことをしてやったつもりでしたが、結果、盗人という汚名を
着せられた子供は井戸に身を投げ、意識不明の状態という悲劇を招きます。
兄貴からことの顛末を聞いた秀は、咄嗟に匕首を出して右手の指2本を切り落とします。
「今日からスリやめる、盗人やめる」
さてここに、お金大好きで貧乏人は相手にしないという偉いお医者さんがおりました。
このお方を騙すようにして連れて来て、子供の容態を診せますと、すぐに入院させて
治療しないと命が危ないと申します。入院には前金として二十円が必要とも。
貧乏長屋のどこに二十円なんて大金があるのでしょう。
この話を聞いた秀は、見事この高慢な医者の懐から財布をスリとってきます。
約束を破ったのは悪いけど、子供の命に関わること。どうぞこの場は見逃してくれと。
それに、どうせこのお金は医者に戻るのやから。 確かに!
「それにしても、指2本失った手でそれだけの仕事ができるとは。
やっぱりお前は名人やなあ」
「兄貴、実はわい左利きでんねん」
チュンチュン
【本日のよもやま】
秀と兄貴のやり取りとか泣けるセリフがいっぱいの人情噺です。
でもええ話やあ〜と感動しているだけでは終わりません。
だって落語ですから。
主人公が左利きということで一気に落とします。
瀕死の子供、指を切り落としたスリ、高慢で強欲な医者、意地悪な駄菓子屋の婆等々
人間模様の全てがこのサゲのためにあったということに愕然!
大どんでん返しなサゲで一気に落語の世界に引き戻してくれます。
そうくるか〜とうれしくなる見事なサゲでした。
ざこばさんがこのお噺を初演されたときの逸話
兄貴が秀を叱りつける
「たかだか五厘か一銭のおもちゃの笛、なんで銭出して買うてやらんのや。
それが泥棒根性ちゅうんじゃ!」
というセリフで感極まって号泣されたとか。
お客さん泣かす前にご自分が泣いてしまったんです。ざこばさんらしいなあ〜
4日の高座でも泣かれたのかな? 観たかった(≧∀≦)
チュンチュン