落語の旅人、庭乃雀でございます。
2003年から始まったビジットジャパンキャンペーンとやらが功を奏して、
海外からの観光客が爆発的に増えてきた今日この頃。
経済的にはいいのかもしれないけど、問題もたくさん。
特に京都はいつ行っても大変な混雑。とても風情を味わうという状態ではありません。
そうだ、京都に行こう! と、思い立って
日々に疲れた人が癒しを求めてやって来ても、かえって疲れてしまいそうです。
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とりわけ東山界隈、清水寺はとんでもないことになってますね。
清水の舞台、底抜けるんじゃないかと心配になるくらいの混雑ぶり。
とはいえ大切なお客様、もう来ないで! と、断る訳にもまいりません。
そこでオススメなのが、早朝拝観です。
ほとんどのお寺の開門時間は午前9時ですが、幸い清水寺は午前6時開門です。
観光客で混み合う前に本来の清水寺の風情を味わいましょう。
何と言っても清水寺は京都屈指のパワースポット。(と雀は思っています。)
誰もいない八坂通、産寧坂を歩いてみたい。誰もいない清水の舞台を見てみたい。
誰もいない音羽の滝をひとりじめしたい。そして最強の観音パワーを先取りしたい!
そうだ、早朝の京都に行こう!
というわけで、頑張って早起きし、始発にとび乗り京都にむかった次第でございます。
大阪からだと始発に乗っても、清水寺到着は7時すぎ。
理想的には“開門と同時”なんだけど、地元の人たちがちらほらと、
朝の挨拶を交わす声を聞きながら、歩いた道はほぼほぼ誰もいない状態でした。
静寂に包まれた境内。そして朝の清廉な空気の中の音羽山の姿は圧巻!
緑のバリエーションが朝日に映えてなんと美しいことか!
秋にはこれがオレンジのそれになるのです。
この音羽山全体が観音さまそのものなんだなあと実感いたしました。
本堂はただいま屋根の葺き替え工事中(2020年3月完成)で、素屋根と呼ばれる
足場ですっぽり覆われてる状態。ちょっと景観的には残念ですが、
それでも舞台からの絶景は変わらず、遠くに見える京都タワーに何故かほっこり。
本堂、奥の院、音羽の滝、境内のすみずみをゆっくり堪能した8時半頃、
ぼちぼち人が増え始め、9時を過ぎる頃には、観光バスも到着した模様。
いつもの風景とあいなりました。
始発に乗るため朝食をあきらめて出て来たので、もうお腹がぺこぺこです。
心満たされ満足した雀、お腹を満たすためいろんな国の人たちで活気づく清水寺を
後にしたのでありました。
早朝拝観がくせになりそうですが、実は清水寺は夕陽の名所でもあります。
沈む夕陽をひたすらみつめ、極楽浄土を思い浮かべる『日想観』という修行法。
清水寺西門は古くから、この『日想観』の霊地だそうです。
次回はこの西門から遠く嵐山の谷間に沈む夕陽を眺めに来たいと思います。
チュンチュン
さてさて
京都のとある御大家のお嬢様、年は十八、近所でも評判のべっぴんさん。
あろうことか清水の舞台から飛び降りるという噂がたちます。
世間は大騒ぎ。その噂は口コミで京都中に伝わり、
当日は境内中どこもかしこも黒山の人だかりとなりました。
それを当て込んで食べ物屋が出る、物売り店が出るで経済効果も抜群です。
舞台の下では、お嬢様が現れるのを今か今かと待つ男たち。
飛び降りるに至った理由をあれこれ詮索しあっているところへ
満を持して乳母さんを従えたくだんのお嬢様の登場です。
いよいよか〜待ってました! 群衆の熱気は最高潮に盛り上がってます。
ところが、お嬢様いっこうに飛び降りる気配がありません。
固唾をのんで見守る群衆を隅々までゆっくり見渡すと、くるっと身を翻し
舞台を去ってゆくではありませんか。
なんやねん。仕事休んで来てるのに〜飛ばへんのかいな〜
するとお嬢様、乳母さんの方を向いて言うには
「たくさん殿御は集まったが、まこと良い殿御はおらぬものじゃなあ」
チュンチュン
大胆にも品定めの男達を集める為に『清水の舞台から飛び降りる』
という噂をばらまいたわけですね。集客は半分成功というところでしょうか。
今度は『良い殿御』を集める戦略を練らなければ!
【本日のよもやま】
清水の舞台の高さは地上約13メートル。4階建てのビル相当の高さだそうです。
檜の板がおよそ410枚敷き詰められた舞台は畳にすると100畳分にあたる広さ。
しかも急斜面の崖に建っている。この立派な檜舞台を支える為の工夫は細部に至り、
先人の知恵と技術の結集となっていて、見所満載なのです。
釘を1本も使わず組み上げられた木造建築なのに、高い強度と耐震性を保っている。
どれだけたくさんの参詣者がこの舞台上に集まっても、何百年間というもの
底が抜けたという話は聞いた事がありませんもんね。
各時代の名もなき大工さん達が延々と受け継ぎ守ってきた舞台は、
今、怒濤のように押し寄せる観光客にもびくともしないのでありました。
ほんまに昔の人は偉かった! 日本が誇る伝統技術のひとつです。
チュンチュン
『清水の舞台から飛び降りる』
このお噺の主人公のお嬢様は、飛び降りると言って飛び降りなかったのですが、
実際、昔はほんまに飛び降りた人がたくさんいたんだそうで。
自殺志願ではなく ほとんどの動機が願掛けでした。
高い崖から飛び降りるぐらいの覚悟があれば、願いも叶うという信仰心です。
清水の舞台、死ぬために飛び降りるのではなく、生きるために飛び降りたのです。
『清水寺成就院日記』なるものがありまして、それによると江戸時代中期から
明治維新直前迄の間に、未遂も含めて飛び降りた数なんと235件。
内訳は10〜20代の若者が全体の73%を占め、そのほとんどが一般庶民。
そして驚くことに生存率85%!
こう言っちゃ何ですが、以外と死なないもんなんですね。
江戸時代には『傘をさして飛び降りれば、恋が成就する』なんて俗信もあったそうで、
絵師鈴木春信は若い女性が飛び降りる姿を浮世絵に描いています。
最も生還したあと、願いが成就したのかどうかは記録が残ってないので知る由も
ありませんが、それほどの強運の持ち主ならば自力でなんとでもなったことでしょう。
チュンチュン
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