落語の旅人、庭乃雀でございます。
新町界隈ぶらり一周の続きです。
当時の面影は何ひとつ残っていませんが、桜が続く堤を行く艶やかな道中に
思いを馳せながら、西に向かうとなにわ筋に突き当たります。
左に折れて南下しますと右手に新町南公園。その公園の片隅に
「ここに砂場ありき」 という碑が建っています。
ここに砂場があるよ!と子どもたちにお知らせしてるわけではありません。(≧∇≦)
その砂場とは砂場が違います。
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石碑の裏にある史実によると、時はずっと遡って大坂城築城の際、この辺りは
全国から集まってくる砂や砂利などの資材を置いておく場所だったので「砂場」と
呼ばれたそうです。資材と共に沢山の大工さんや工事に従事する人達もやってきます。
人集まれば賄いの飲食店もできるわけで、それが蕎麦屋だったのです。
「いずみや」と「津の国屋」という二軒が砂場の側に店を構え、
日本最古の蕎麦屋となりました。
なんと、蕎麦屋発祥の地は大阪なのでした!
江戸も大阪も始まりはうどんが主流で、蕎麦はうどん屋で食べるものだったそうです。
蕎麦専門店が出来たのは、秀吉が大阪城を建ててくれたおかげなのでした。
やがて砂場と言えば、蕎麦屋のことになり店名も砂場いずみやに変更されました。
いずみやさんの店の様子は、摂津名所図会にみることができます。
その広さにびっくり! こんな巨大な店、今で言ったらどこかしら?
昔江坂にあったカーニバルプラザなんての思い出しちゃった。
とにかくサービスエリア的な広さです。
お店の繁盛ぶり、新町の賑わいが絵から伝わってきます。
新町遊郭を案内する『大坂新町細見之図澪標』なるものがありまして、
遊女の名前と料金などが細かく書かれた遊郭ガイドブックなんですが、
その「廓名物之分」というページにこの2軒の蕎麦屋の名前が載っていました。
“新町廓に行ったらここで蕎麦を食べるべき”とかなんとか掲載されていたのでしょうか。
いわゆるグルメガイド的なものが昔もあったのですね。
ガイドブック抱えて全国から、新町に遊びにやってきたひとたちはみんな
いずみやさんか津の国屋さんでお蕎麦を食したのでした。
きれいな太夫さんたちも食べたのかなあ、おいしいお蕎麦。
その後、砂場蕎麦は今度は家康が江戸城を居城とする際に一緒に移転し、
更科蕎麦、藪蕎麦と共に江戸の三大蕎麦となりました。
本家砂場はというと、幕末になってうどんの勢いに押され、
明治の頃には姿を消してしまいました。
だから「大阪といえばうどん」と言うのは明治になってからのことです。
大阪屋の名前をもつ砂場蕎麦は今も東京で営業中。
知らなかったなあ。更科、藪は有名だけど、砂場と言うのは初耳でした。
チュンチュン
昔はうどんといえば江戸、蕎麦といえば大阪だったという衝撃の事実を知ったところで
本日のお題は「時うどん」でございます。
さてさて
廓のひやかし帰りの喜六と清八。
寒い寒い夜で腹も減ったし、うどんでも食べて温まろうということになります。
うどんは一律十六文。ところが二人合わせて十五文しか持ち合わせがありません。
どうやら清八には策があるようです。うどん屋を見つけて一人前を注文します。
ふたりで半分ずつするはずが清八がほとんどを食べてしまい、
喜六は泣きながら残った二筋をすすり、お汁をズズズ〜。
さて、お勘定。「銭が細かい、手え出してんか」
「一つ二つ三つ四つ五つ六つ七つ八つ」と数えて
「うどんや今何時や」
「へえ確か九つで」
「十、十一、十二、十三、十四、十五、十六」
「おおきにありがとさんで〜」
まんまと一文誤魔化して意気揚々と出てきます。
この鮮やかさに感動した喜六、「わいも明日やったるねん」
清八のやったとおり、昨日とすっかり同じにやるつもりが、
昨日よりもずっと明るいうちに家を出て、うどん屋を探してます。
見つけたうどん屋は、遅いし、不味いし、昨日とはえらい違い。
ぐにゃぐにゃのうどんを食べきり、辛い汁を飲み干し、
待ちに待ったお勘定の段、いくでうどん屋〜
「一つ二つ三つ四つ五つ六つ七つ八つ」
「うどんや今何時や」
「四つです」
「五つ六つ七つ・・・」
三文損しよった
チュンチュン
【本日のよもやま】
せっかく砂場蕎麦の存在を知ったのだから、お蕎麦を食べて帰ろう。
どうせならかつての砂場の近辺に、老舗蕎麦屋でも見つかったらいい感じ〜と
思って探してみました。すると、2軒ほど見つけたのですが、この日は日曜日。
定休日なのか閉まってました。残念! けれどもすっかりお蕎麦の気分なので、
心斎橋まで歩いて浪花そばさんへ行くことに。
間違いない! いつもながら絶品のお出汁、旨い蕎麦。
今回は温かいお蕎麦に致しました。
テーブルに揃っている薬味の柚子七味がこれまたすばらしいのです。
少しふりかけるとまたふわ〜っと深い味わいに。とても上品な刺激で癖になります。
この七味は購入することが出来ますので是非お試しあれ。
母が無類のうどん好きで、妊娠中もずっとうどんばかり食べていたから、
さぞやうどん好きの子供になるやろうと思っていたらしいですが、
雀はどちらかというとお蕎麦の方が好き。更科系ではなく藪系です。
大阪で砂場蕎麦が食べられないとは残念なことですねえ。
東京に行く機会があれば、きっと砂場蕎麦を食べに行こうと思います。
チュンチュン
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