落語の旅人、庭乃雀でございます。
動楽亭に行ってきました。
地下鉄動物園前駅下車、1号出口から出るとすぐに
はためくのぼりが目に飛び込んできます。
左手に関西本線の高架、新世界はジャンジャン横丁へと続く
道のそばに動楽亭はあります。
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動楽亭は、ざこばさんが元ご実家を改装して作られた寄席小屋です。
毎月1日から20日までの昼席を開催。当日券のみで、
木戸銭2,500円を払って、来たもん順に入場します。
1時半開場で、2時開演。
初めてなので、どれくらいの時間に行けばいいかなあと迷いつつ
開場30分前の1時に到着しましたが、すでに行列が。
平日の昼間、しかも台風が近づいていて雨模様にもかかわらずです。
小さな小屋ですがとってもきれい。靴を脱いで上がります。
前から座椅子、子供用の小さな椅子、ベンチ席と並んでます。
後ろでも十分な広さなので、ベンチ席に座りました。
座席が全部うまって60席ぐらいでしょうか。本日大入り満員でございました。
高座の背面には『楽』と書かれた額が。米朝さんの書によるものでした。
お人柄が現れてるような、八つの楽の文字が楽しげです。
本日の演目は
桂小鯛 人真似でうまくいった試しはない『看板のぴん』
桂二乗 無くて七癖『四人癖』
桂塩鯛 引越し祝いを調達に盗みに入るとは『へっつい盗人』
桂吉弥 そないに人の夢が聞きたいか『天狗裁き』
中入り
桂しん吉 素人に添削されて慢心を反省する『西行鼓が滝』
しん吉さん、鉄道オタクなんですね。鉄道ものまね面白かったです。
桂雀三郎 柳馬場通押小路、虎石町の西側で・・・『胴乱の幸助』
豪華なラインナップでしょ(≧∇≦)
やっぱり生で聴く出囃子はたまりません。お噺もライブで聴くのが一番です。
どんなお噺を聴かせてくれるんやろう。
幼稚園の頃、先生の紙芝居をわくわくしながら待っていたあの頃と
気分は変わっていないのかもしれません。
チュンチュン
さてさて
今回のお題は、本日塩鯛さんが演られたお噺、『へっつい盗人』です。
今日も今日とて、喜六と清八。
友達の引越し祝いにへっついを贈ってやろうと相談してます。
ところが2人とも持ち合わせがありません。
家賃も滞るような状態で、へっついなど買えるわけもなく。
丼池筋の道具屋の店先で見かけた丁度手頃のへっついを
今晩盗みに行こうと話がまとまります。
捕まったら、監獄行き覚悟で決行します。
盗んででも引越し祝いしようとする思考回路がすごいです。
天秤棒と縄を持ち、怪しまれないように
仕事で重い荷物を運んでいるフリをしながら、
めざす道具屋に到着します。
清八は盗みの段取りを始めますが、
喜六は石灯籠の頭を落として大きな音をたてたり、
じょんじょろりん、じょんじょろりんと長〜い小便をしたり、
例によってすかたんばかり。
ようやく清八が重たいへっついを持ち上げ
喜六がその底へ縄を通す段になりましたが、
暗くてうまく縄がとおせません。
とうとう清八、持ちこたえられずに
喜六の手の上にへっついを落としてしまいます。
「痛〜っ痛〜っ痛〜っ」
大きな声出すな!と清八が喜六をどついたことで、
仲間割れ、喧嘩がはじまります。
「このアホ、ぼけ、カス」
「そーじゃ、そらわいはアホじゃ。
アホなればこそこんな夜更けにこんなことしとんのやから。
けど、おまえもそんな賢ないぞ!
おまえかわいかどっちがアホかおやっさん起こして聞いてみよ」
「そんなことできるかいな」
ワアワア言うとります。お馴染みのへっつい盗人でございます。
チュンチュン
【本日のよもやま】
このお噺には続きがあります。
ふたりはへっついを盗み出すことに成功して長屋に帰る。
騒ぎの一部始終を見ていたおやっさんは、清八の後をつけて長屋の場所を確認。
翌朝、代金を回収した上に身ぐるみはいでしまう。嘆いたふたりは
「ああ、これもへっついさんなぶったたたりや」
というのともうひとつ、
おやっさんが喜六を捕まえておまえの知恵ではないやろうと言うと
「へっついだけに清八にたきつけられました」
これは六代目松鶴さんが演じられた型で、
笑福亭一門の方はこのサゲを使われてるようです。
二人の口論で終わる型は初代春団治さんがSPレコード録音の際に
演じられたもので、再生時間がとても短いために生まれた型だそうです。
チュンチュン
動楽亭のある新世界界隈は、大阪でも指折りのディープな地域。
昔はなんでこんな場所に動物園やら美術館やらあるんやろうと思ってました。
片方だけの靴を売ってたり、50円を100円で売るという( ̄□ ̄;)!
想像を絶する荒ワザをみせる露店を脇に見ながら美術館に向かう。
実に不思議な感覚を味わえるゾーンでございました。
地下鉄動物園前駅のホーム。動物の後ろ姿がかわいい!
今は、国内外を問わずディープな大阪を味わいたい観光客の方が増えて、
ちょっと様子が変わってきました。お客さんが増えると町もキレイになって、
大阪人ソウルフードと称して“キレイな”串カツ屋さんが増殖致しました。
“ソース二度漬け禁止”をやってみたい人で行列が出来てます。
実際には串かつ食べる率は、お好み焼き食べる率に比べると格段に低いと思います。
串かつ有名店“だるま”のご主人も、ケンミンショウに出演された際、
お客さんの80%は観光客だと明言されてましたし。
そんなこんなで新世界と呼ばれる通天閣まわりは、ちょっとした
串かつテーマパークと化しております。
ほんとのディープを味わいたいなら、あびこ筋を渡って南側に行きましょう。
浪速区との境、こっちから西成区となります。
動物園前一番街とかかれたアーケードを進むとその先に飛田新地があります。
日本で唯一の現役遊郭でございます。
ちょっとスリリングなこの界隈、ここもまぎれもなく今の大阪なのだなあと、
初めて足を踏み入れた時は、多少なりともショックをうけたことを思い出します。
動楽亭で落語を聴いて、そのあとジャンジャン横丁に流れて串かつで一杯。
この界隈、落語の世界にはぴったりあってる気がします。
友達の引越し祝いに盗んだへっついを贈ろうなんて、このお噺の二人のような人達、
ここには普通にいてはる気がします。
チュンチュン
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