2016年10月16日

雨後の月というものは、悪悪う冴えるもの 仔猫

ご訪問ありがとうございます。
落語の旅人、庭乃雀でございます。

ただいま大阪四季劇場で公演中のミュージカル『Cat’s』観てきました。
昔々ワーキングホリデーで滞在してた、オーストラリアで観て以来2回めです。
英語全然わからず観たあの時も、体の真ん中から感動がこみ上げてきましたが、
本日、日本語の日本の猫たちにも熱い感動を頂きました。

スポンサーリンク





T.S.エリオットが子供のために書いた詩集
『ポッサムおじさんの猫と付き合う法』のなかの一節で、
『猫に名前をつけるには』という詩篇にインスパイアされたAL=ウェバーが、
ミュージカルに仕立てあげたのがこの名作『Cats』です。

ミュージカルの内容は知らなくても、劇中でグリザベラという猫が歌い上げる名曲、
『メモリー』は、誰もが一度は聴いたことがあるはず。

しなやかな猫たちのダンスと圧巻の歌唱力に魅了された一日でした。

そんなわけで、本日のお題は猫つながりということで『仔猫』をご紹介致します。
舞台はニューヨーク下町のゴミ捨て場ではなく、大阪は商家の町、船場です。

船場は、北は土佐堀川、南は長堀川、東は東横堀川、西は西横堀川と
4つの川に囲まれた四角い地域のことを指しました。
名前の由来には諸説あるものの、古来より船着場であったためこの名前になった
という説が有力だそうです。
現在、土佐堀川以外は全部埋め立てられて、それぞれ、長堀通、阪神高速南行線、
阪神高速北行線となっております。

船場_仔猫_2.jpg

船場が商売の町として発展する基盤ができたのは、秀吉の時代。
秀吉が大阪城を築城する際、たくさんの家臣や武士たちが集まりましたが、
それに伴い、武具、食料、生活用品を調達する必要がありました。そこで、
平野、堺、伏見、京都から商売人を集め、城下町としての形が出来上がっていきました。
平野の商売人が住んでいたところが『平野町』、伏見の商売人が住んでいたところが
『伏見町』と、今も残る地名にうかがうことが出来ます。

その後、両替屋、薬問屋、呉服屋、金物屋、船宿、料亭など続々と現れ、活気づき
『船場商人』の名は全国に知れ渡ることとなりました。
江戸時代には『天下の台所』『天下相場の元方』として益々発展していったのです。
やっぱり商都大阪の今があるのは、太閤秀吉のおかげなのでした。

チュンチュン

船場_仔猫_1.jpg

さてさて
船場のある大きな問屋さんに、お鍋というおもろ〜い顔した女子衆さんがやって来ます。
あんまり不細工なので、『人一化九』人が一部で化け物九部なんて、
ひどいこと言われてますがこのお鍋、顔こそおもろいがまことに気持ちの良い働き者。
人に分け隔てなく情があるので、奉公人の間でも評判がよく、
お鍋、お鍋とみんなから重宝がられておりました。

そんなお鍋にあるとき、奇妙な噂がたちます。
雨あがりの冴え渡った月を見上げて不気味に笑ってたとか、
二重三重の締りを越えて、夜の町を出歩いているとか、
夜自分の部屋の鏡の前で、血に濡れた口元を見てニタリと笑っていたとか・・・

こんな噂が広まるとのれんに関わるというので、旦那さん番頭にお鍋の調査を命じます。
お鍋の留守中に部屋を調べてみますと、行李の中からなんと血まみれの猫の毛皮が!

ぎゃ〜〜〜

こんなおそろしい女を置いておくわけにはいかないということになり、
番頭さん、お鍋を部屋に呼び、暇を取って家元に帰るよう説得します。

さては自分の秘密がばれたのだと悟ると、お鍋は番頭に身の上を打ち明けます。

親が代々山猟師で、生き物の命を奪う仕事柄、親の因果が子に報い、
仔猫を獲って食らうのが自分の病となってしまったと。

すると番頭さん
「因果なもんやなあ。かわいそうに。昼間はあんなに明るいあんたがなあ・・・
ああ、猫かぶってたんやな」

チュンチュン

【本日のよもやま】
月光に照らされてグリザベラが歌い上げるメモリー
雨後の冴え渡る月を見上げて不気味に笑うお鍋
猫は月の魔力を吸い取るなんて話もありますが、
猫も月も神秘的な存在だということは間違いないようです。

『仔猫』をただの怪異譚にしたくないとは、枝雀さんのお言葉です。
怪談噺の形を借りた“してはいけないことをついしてしまうという誰にでもある話”
という位置づけです。
枝雀さんにとっては、お鍋は大好きなキャラクターのひとりで、
裏表なく一生懸命働いて、奉公人仲間からも好かれているお鍋どんが
かわいくていじらしくて心打たれるのだそうです。
だから、あんまり不細工不細工と傷つけるようなことは言いたくないのだとか。
確かに枝雀さんの演じるお鍋どんはどこかかわいいです。

7つの時にかわいがってる仔猫の足の傷をなめてやったことから、
親の因果のスイッチが入ってしまったというところがなんともせつないですね。
そんな因果を忘れるために昼間一生懸命仕事しているんやなあとか思うと、
雀もお鍋ちゃんがとってもいじらしく思えてくるんだにゃ〜

チュンチュン

スポンサーリンク



posted by 庭乃雀 at 02:58| Comment(0) | 大阪編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がない ブログに表示されております。