落語の旅人、庭乃雀でございます。
今年も怪談噺の恋しい季節となりました。
怖い話を聞いたからといって、この暑さが和らぐわけでもないですが、
ひゅう〜どろどろは夏の風物詩として楽しみましょう。
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恒例となりました繁昌亭での『お笑い怪談噺の夕べ』鑑賞会。
だいたい、趣向は毎年同じなのですが、分かっていてもおもしろく
楽しい会に今年も行ってまいりました。
5日あるうちの千秋楽。
林家染雀さんの「化け物使い」
笑福亭たまちゃんの「ホスピタル」
桂米左さんの「皿屋敷」
旭堂南鱗さんの講談「江島屋騒動」
笑福亭福笑さんの「金策幽霊」
というラインナップでございました。
舞台美術もみごとにいつもと同じ。こう同じやと安心感というか、
ああ今年もここにこれたなという思いもひとしお。
思わず「ただいま」と口をついて出てしまいそうでございます。( ̄▽ ̄)
ひょっとしたら祀ってある御札も使いまわしやったりして。
いやいや!さすがにそれはないでしょう。大阪天満宮のお膝元ですからね。
福笑さんが言ってました。演者とともにお客様もお守りするためだと。
おかげさまでいつも何事も無く無事楽しませて頂いておるのでございます。
そして毎回ホンモノ(?)の幽霊もでます!
この幽霊がまた、気い使いのやさしいやつなんでございます。
会場は大いに盛り上がり、終演後の記念撮影でお開きとなりました。
幽霊のお染さん、来年も会えますように。
チュンチュン
本日のお噺は上記のラインナップのうちの『化け物使い』をご紹介したいと思います。
さてさて
天下茶屋聖天下の佐々木のご隠居さんは、とにかく人使いが荒い。
ですから奉公人が長続きしません。
今回も島之内にある吉田家という口入れ屋さんに、男衆さんひとり奉公人を頼みます。
誰もが知る人使いの荒さ、行くだけ無駄やとみんなが尻込みする中、
一人の男が手を上げます。
この男、他の者が3日も務まらず泣いて帰ってくるものを、
一生懸命くるくるくるくる働いて、早3年の月日が流れました。
名前は権介さん。ホントの名前はわかりませんが、
ご隠居さんが奉公人の名前は代々権助と決めていたので権介さんです。
ご隠居さんも、自分の無理難題にめげずにしっかりついてくる
この二十八代目権助さんがたいそう気に入っていましたが、
化け物屋敷と噂の高い家に引っ越すと決めた時、暇をとって辞めてしまいます。
次の奉公人がみつからぬまま、引っ越しを終えた日の夜、果たして化け物の登場です。
現れたのは一つ目小僧でした。
ご隠居さん、ひとつも慌てず、皿洗いをさせ、布団を敷かせ、肩たたきを命じ、
相変わらず誰であろうがこき使います。
二日目は三つ目の大入道に屋根の手入れをさせました。
三日目は、のっぺらぼうに針仕事。
「顔があろうがなかろうがやっぱり女はええなあ。
なまじ目鼻があるばかりに苦労している女はいくらでもいる」というあたり、
海千山千乗り越えてきたであろうご隠居さんの味が出ています。
4日目は何が出てくるんやろうと楽しみにしてますと、出てきたのは狸でした。
一つ目小僧も、大入道も、のっぺらぼうも、この狸が化けていたのでした。
そんなことはちっともかまわない。
ご隠居さん、今夜も用事を言いつけようとするとこの狸、お暇を頂きたいと申します。
「なんでや」
「あんさんみたいに化け物つかいの荒いひと、見たことがない」
チュンチュン
【本日のよもやま】
上方ではこのお噺演られる方少ないのでしょうか。
桂吉朝さんと南光さんしか音源見つかりませんでした。
南光さんバージョンは、ご隠居さんではなく、
夫婦者が化け物屋敷に引っ越ししてくるという設定になってます。
後は同じ、旦那が一つ目小僧、三つ目入道、のっぺらぼうをさんざんこき使います。
本日の染雀さんは大筋南光さんバージョンで、最後出て来て暇乞いするのが、
狸ではなくゲゲゲの鬼太郎となっていました。
いろいろアレンジできて演じるのが楽しいお噺ですね。
でもこの場はやっぱり豪胆なご隠居さんという設定の方が雀は好きです。
化け物とのやりとりに味が出て面白いんじゃないかなあと思います。
チュンチュン
本日のお噺に出てくる“天下茶屋 聖天下”
うちから堺方面へ出かける時は、地下鉄堺筋線で終点天下茶屋まで行き、
南海電車に乗り換えるというルートが便利で良く利用します。
乗り継ぎ地点として通り過ぎるだけだった天下茶屋。
今回、佐々木の御隠居さんが住んでいた“天下茶屋 聖天下”を
ぶらぶら散策してみることにしました。
『天下茶屋』いい響きです。『てんがちゃや』と読みます。
豊臣秀吉が堺への道すがら立ち寄った茶店があったことが
名前の由来とされています。
天下茶屋の駅を出て東側、天下茶屋駅前商店街を抜けると、
その先にまた商店街が続いてますが、雰囲気ががらりと変わります。
看板には天下茶屋商店会とあります。
アーケードはなくなり、道幅は細くなり、どの店も年記を感じられます。
なんかみんな修理とかする気はないみたいです。(^_^;)
まるで時間が止まったような。
タイムスリップしたみたいなとってもディープな世界です。
途中阪堺線の線路と交差します。ここは北天下茶屋駅です。
踏切を渡って真っ直ぐ行くと、天下茶屋の聖天さん、正圓寺に突き当たります。
この道は正圓寺への参道なのです。
目指す先に正圓寺の裏門が見えてきた頃、交差する道の左手向こう、
遠くあべのハルカスがそびえています。
超ディープな古い街から、超近代的な日本一高いビルが見えるのです。
この対比はたまりません。
正圓寺は、聖天山の山頂にあります。
そう聞くとえっ?山登りするの?と思われるでしょうがご安心ください。
標高14メートルです。(≧∀≦) 大阪5低山のひとつに数えられている、
一応“山”です。
そしてなんと、古墳です。
天保山 御勝山 聖天山 帝塚山 茶臼山の5山を称して
大阪アルプスと呼ぶのだそうです。
5山を制覇すると最終地点、大阪最低峰 天保山マーケットプレイスにある
『山小屋』という喫茶店で、登山証明書と縦走証明書なるものがもらえるそうですよ。
天保山山岳会発行ですって。さすが大阪人!楽しい洒落です。
正圓寺も歴史の古い由緒あるお寺ですが、失礼ながら荒れ寺という印象が否めないです。
たくさんの仏様、神さまがいらっしゃいますが、境内に数多くある石仏は摩耗していたり、
首が無かったり、奥の院はさらに怖いです。
『確かになにかがいる』感じなのです。
境内には桜の木もあって、春には地元のお花見客でにぎわうのでしょうか。
聖天山を下山して(*^_^*) ふたたびディープな路地へ。
通りをきょろきょろしながら、写真をとっている私たちを、
いぶかしげにずっとみつめているおばさんがいました。
遠ざかっても、振り返ると小さくこちらをうかがっている姿が見えました。
面白い写真が撮れますか?とたずねてこられたおじさんもいました。
防犯カメラなどないのでしょうけど、まだ人々の目がちゃ〜んと
防犯カメラとしての機能を果たしている町なんですね。
地元の人達から見れば、私たちの方がよっぽど化け物にみえたかもしれません。
チュンチュン
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