2016年04月09日

次兵衛さん、別家目の前にして河で船を割る  百年目

ご訪問ありがとうございます。
落語の旅人、庭乃雀でございます。

日本人で良かったと思える季節がまた巡って来ました。
日本人として日本に生まれた幸せを、日々感謝して
暮らしておりますが、桜と紅葉の季節には、
特にその思いを強くします。

今年もまた会えたね、咲いてくれてありがとう!

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江戸時代から桜宮神社付近の大川両岸は、
桜の名所であったそう。
花の盛りには「雲と見、雪と疑ふほど」と表現され、
「浪花において遊宴の最上、花見の勝地」(『浪華の賑ひ』)
と賞される名所になりました。

旦那衆はお馴染みの芸者や太鼓持ちを引き連れて、
屋形舟で乗りつけ、粋に桜を楽しんだとか。
川面にはらはら散る桜、行き交うたくさんの屋形船。
賑やかなお花見風景が浮かんで来ますね。

明治18年の淀川大洪水で東岸の桜が大打撃を受けて以来、
お花見といえば西岸の桜、特に造幣局の桜が有名になりましたが、
現在では東岸の桜も復活。建築家の安藤忠雄さん提案の、
2004年から始まった『大阪を桜で元気に!』というプロジェクトが
功を奏し、今や大川両岸に、咲き誇る桜の木は約4700本。
延々続く桜並木は圧巻です。

で! 今年は、そんな江戸時代の人たちの真似をして、
舟に乗って桜を楽しむことにしました。
その名も『落語家と行くなにわ探検クルーズ桜スペシャル』
なんと当ブログにぴったりの企画でしょうか!

落語家さんの楽しい案内で大阪の町を川から探検する
というもの。湊町の船着場を出発した舟は道頓堀川、木津川、
堂島川、東横堀川を経て、また道頓堀川へぐるっと一周、
1時間半。今回は桜スペシャルなので、大川を加えて巡る
2時間コース。

本日のご案内役は、桂ちょうばさんでした。
途中披露してくださった三十石の船頭歌でまったりと、
当時の舟旅に思いを馳せ、あいにくの曇り空でしたが、
大川沿いの桜は満開で、ときおり開閉式の屋根を
開放しての巡航は、とても気持ちの良いものでした。

川の上から大阪を眺めるのは初めてでしたが、
ジョギングしてる人、宴会してる人、手を振ってくれる人、
陸の人々の動きが活き活きとなぜか鮮やかに目に映ります。
まるでズームアップしたみたいに細かいところまでよく
見えるのです。なんだか不思議な感覚でした。

ちなみに、ちょうばさん曰く、手を振ったら必ず手を
振り返してくれる、それが大阪人なのだそうです。
ベビーカーに乗った赤ちゃんまでも、
手に持ったしまじろうを振ってくれました。
かわいい〜(≧∀≦)

それにしても大阪って橋が多いなあ。八百八橋とはよく言ったもの。

魚屋の若い衆が玉江橋の真ん中にズボ〜っと立って、
天王寺さんの五重の塔に妙なもんをみつけ、
淀屋橋、大江橋、しじみ橋、橋を三つ渡って池田に猪買いに、
高麗橋から舟を出し、桜宮で戯れば、ここで逢ったが百年目、
身投げを助けようとして助けられず、自分がはまった農人橋、
いたずら豆狸が怪我をして、らくだを落とした太佐衛門橋・・・

橋をくぐる度、あのお噺、このお噺の場面が浮かび、
こんな楽しみ方できるのも、
ひとえに落語に出会えたおかげでございます。

チュンチュン

桜宮_1.jpg


桜宮_2.jpg

さてさて
船場あたりのある大店の一番番頭の次兵衛さん、
店の者にはいちいち厳しく小言の日々で、
皆には少々煙たがられています。
相当堅物なのかと思いきや実は本人は大変な遊び人。
今日も店の用事にかこつけて、桜宮で花見の宴と
洒落込みました。馴染みの芸者や太鼓持ちを引き連れて、
東横堀から桜宮まで、ゆるり屋形舟で大川ゆけば、
桜は今が満開で、人々はそれぞれに千差万別の春景色。

まだお店に戻って仕事があるので、程々にしておくつもりが、
船中で少々飲み過ぎまして、着いた頃にはすっかり酔っぱらいの体。
めんない千鳥という、扇子で目隠しして芸者を追い回す
お座敷遊びで盛り上がってます。

「そうれ捕まえた」 と言って、扇子の面を外してみれば、
掴んだ相手はなんと、親旦那さん! 
ちょうど医者の玄白さんとお花見に来てらしたのです。
さあ大変、えらいところを見られてしもた。
思わず「これはこれは旦那さん、ご無沙汰しております。」
酔いも何もいっぺんに醒めて、真っ青になってお店に戻ります。

さて、いつクビを言い渡されるのか、まんじりともせず
夜を明かし、いよいよ旦那さんに呼ばれます。
もはやこれまでと、覚悟を決めて参りますと、
意に反して日頃の仕事ぶりを褒められました。
ただし、上に立つ者と下に立つ者とは持ちつ持たれつの関係、
もう少し下の者を思いやり労わってやらねばならないと
優しく諭されたのです。

そして、やれやれと思ったところで、旦那さんが聞きます。

「それにしても昨日はなんであんな妙な挨拶したんや?」
「えらいところで会うてしもた、、これはもう百年目やと思いました。」

チュンチュン

【本日のよもやま】
実は最初、サゲの意味がわかりませんでした。
『ここで逢ったが百年目』の百年目なんやろうなとは思いましたが、
それとサゲがうまく繋がらなかったのです。
改めてよくよく聴いてやっとわかりました。
えらいところを見つかって、絶体絶命。きっとクビになると思い、
もはやこれまで百年目。
百年目に会ったのだから、ご無沙汰しておりましたという
挨拶になってしまったのですね。確かにえらい久しぶり!

ちなみに
『ここで逢ったが百年目、盲亀の浮木、優曇華の花、いざ尋常に勝負!』
と、続きます。仇討ちの場面などでよく聞きますね。
百年目には運命のとき、運の尽き、千載一隅のチャンスなどの
意味があります。
盲亀の浮木は百年に一回浮上する盲目の亀が、
海に浮かんだ木の穴に頭を入れること。
優曇華の花は仏典にある、三千年に一度咲く花だそうです。
どちらも滅多に無いことの例えです。

チュンチュン

本日のお噺の舞台、桜宮へは東西線大阪城北詰駅、
JR環状線桜宮駅からが便利です。
ちょうどこの二つの駅の間の区域が、毛馬桜宮公園で、
たくさんの人が花の季節を楽しんでいます。

桜宮駅から徒歩5分のところに桜宮神社があります。
境内には立派な桜の大木が2本、今年も見事に花を咲かせています。
本殿奥の早馬稲荷社の前にも小手毬のようなかわいい
枝垂の八重桜がゆれています。名前にふさわしい桜の神社です。
歌のひとつも詠みたくなるもの、と言って哀しいかな
私には詠めませんので、歌人の歌を味わいましょう。

神風に心安くぞ 任せつる 櫻の宮の 花の盛りを(西行)
花に風 軽く来て吹け 酒の泡(嵐行) 
咲くからに 見るからに 花の散るからに(鬼貫)
舟よせて あくまで春は 遊ばなん 
櫻の宮の 花の木のもと( 國美) 

大川沿いのソメイヨシノたちが散りかける頃、造幣局の山桜たちが
見頃を迎えます。まだしばらくお楽しみは続きます。
儚げなソメイヨシノも素敵ですが、実は私は元気でかわいい
山桜が大好きです。種類もたくさん、それぞれに粋な名前がついていて、
呼びかけるのも楽しくて。

まるでピンクの雲がたなびいているような、この時期の大川界隈。
大阪人で良かったなあ。日本人で良かったなあ。

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posted by 庭乃雀 at 03:02| Comment(0) | 大阪編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする