2018年08月27日

お菊さん、お皿の数2日分読んでお休みとる  皿屋敷

ご訪問ありがとうございます。
落語の旅人、庭乃雀でございます。

夏といえば怪談話。落語にもありますね、ぞぞっとするお噺。
その中で今回選びましたのは『皿屋敷』というお噺。
似たような伝説は日本各地にあるそうですが、有名どころでは西の『播州皿屋敷』
東の『番町皿屋敷』が広く知られていますね。

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どちらが本家本元かというと・・・

最も古い原型は播州を舞台とするお話が室町末期の『竹叟夜話』にありますが、
内容が知られている皿屋敷とは少々異なります。
お皿や井戸が出てくるうらめしや〜のお話は18世紀初頭頃から江戸牛込御門あたりを
舞台にした物がいくつか見られるようです。

舞台化された最古のものは1720年大阪嵐座で上演された歌舞伎『播州錦皿九枚館』
1741年大阪豊竹座で上演された浄瑠璃『播州皿屋敷』となっていて、
どうやら物語として確立させたのは播州が先のようです。

落語でも上方が元で、二代目桂三木助さんが六代目三遊亭円生さんに伝授されたそう。
江戸では『お菊の皿』となっております。

チュンチュン

で、その伝説とはこんなお話
昔姫路に青山鉄山というお代官がおりました。たいそう美人のお菊という腰元に思いを
寄せて言い寄りますが、お菊には夫がおり、すげなく振られてしまいます。
鉄山、かわいさ余って憎さが百倍。なんとかお菊をこらしめたい。

先祖が将軍家から賜った家宝の葵の皿をお菊に預けて言う事には、
もし万が一のことでもあれば鉄山身に変えて申し開きせねばならぬ大切な物。
重々そそうのなきように。

その後鉄山、卑怯にもこの十枚一組の皿のうちの一枚を、お菊が留守の間に抜き取って
隠してしまう。そうしておいてお菊に紛失の罪を着せ、激しく責め立てること半端なく。

身に覚えのないお菊、必至で無実を訴えますが、散々責め折檻くり返した末、
手打ちにして屋敷の井戸に投げこむという無惨さ。

それ以来、夜な夜な井戸からお菊の幽霊が現れて、一枚二枚と足りない皿を数える。
とうとう鉄山、気が触れて呪い殺されてしまい、お家は絶えてしまいましたとさ。

さてさて

話はよほど昔の話やが、お菊の幽霊は今でも出ると、ものしりの親っさんから聞いた
地元の若いもん、ほんならこれから見に行こう!と話がまとまります。
お菊さんが九枚目を数えるのを聞いてしまったら、震え付いて死んでしまう。
今まで何人も出かけて行ったがみんなそのとおりになった。
ならば九枚を数える前、七枚ぐらいで逃げて帰ってくればよかろう。

これは面白い!と有志が集まってわいわい大騒ぎしながらやってきました件の車屋敷。
井戸の周りで今か今かと待ち構えていますと、丑三つの頃、青い陰火を従えて
お菊の幽霊のお出ましです。

出たあ〜〜〜打ち合わせ通り七枚の声を聞いて一斉に逃げ帰る。
めちゃくちゃ怖かったけど、ちらっと見たお菊さん、評判通りのすごい別嬪さん。

明日の晩も行こう!

七枚で帰ってくる。何事もない。お菊さんは美人。
そうなるとおもしろくなってきて毎晩通うようになります。
噂は噂を呼んで今や近郷近在から団体でやってくる始末。
連日大賑わいの車屋敷。お菊さんも愛想ふりまいて、なんだかアイドルのよう。

今夜もお菊さん現れてうらめしや〜と始めますが、なんだか声がおかしい。
なんと風邪ひいてまんねんと!

お皿を数え始めますと七枚目でいつものようにみんな一斉に逃げ出します。
なんせ人が多いので逃げるのも大変です。押し合いへし合いしていると
九枚をこえて、十枚、十一枚、十二枚、十三枚・・・と数えるお菊さんの声が。

黙って聞いてたら十八枚まで数えました。
おかしいやないか。なんでやねん!と問いただすとお菊さん

「風邪引いてる言いましたやろ。2日分読んどいて明日お休みしますねん。」

チュンチュン

【本日のよもやま】

姫路と言えばやっぱりまっさきに浮かぶのは国宝姫路城。
世界遺産登録されて25年も経つとは知りませんでした。
日本の世界遺産第1号なんですね。
白い鷺が舞い立つようにみえる優美な姿が、別名白鷺城とも呼ばれる所以です。

JR姫路駅に降り立つと真っ正面にどどーんと姫路城がお控えあそばします。
これはちょっと感動的です。
駅前からまっすぐ伸びるメインストリートの先に何とも優雅な姫路城の姿が!
大手門まで続く大手通はまるで参道のようです。

どこまでも青く澄み渡るピーカン、夏の空に白亜のお城がよく映えます。
ああキレイやなあ、上品やなあ、佇まいが気品にあふれてるわ。
大阪城とは違うなあ・・・

入場口から菱の門、い、ろ、は、にの門、水一門、二門、三門をくぐって
いよいよお城の内部へ。
途中の見所に感心しながらわくわく進んで行く。
中に入ると古い時を感じる木の香り。大きく重厚な梁や柱。
つくづくすごい建築物だなあ。

皿屋敷_1_S.jpg

姫路城は六階建て。
急勾配な階段で天守閣をめざします。
お殿様やお姫様、豪華な着物でほんとにこれを上り下りしたのかな。
おそるおそる足を運びます。
エレベーターでしゅるしゅる〜コンクリート造りの大阪城とは違うなあ・・・

つい、大阪城と比べて評する大阪市民の雀なのでした。
願わくば、観光客のみなさまがどうか大阪城を先に訪れて頂きますよう、
くれぐれも順番をお間違いになりませんように!


最上階天守閣には姫路城の守護神、刑部(長壁)神社が祀られています。
ああ、そうだ、泉鏡花の『天守物語』はこの姫路城が舞台のお話でした。


姫路城の最上階には異形の者たちが住むという伝説がありました。
その伝説を元に、異界の主、美しい天守夫人富姫と、この世の若者、
鷹匠姫川図書之助との恋物語を描いたのが、鏡花屈指の名作と言われる戯曲
『天守物語』です。

富姫を坂東玉三郎、その妹亀姫を宮沢りえが演じた世にも美しい映画を、
懐かしく思い出していました。
心地よい風が吹き渡る天守にて姫路の町を眺めながら。

チュンチュン

さて、姫路城前本丸広場(備前丸)をりの門から出た所が二の丸、上山里曲輪。
本日目指すところの『お菊井戸』はそこにあります。
身に覚えのない濡れ衣で責め殺されて投げ入れられたという井戸。
開けた広場にあり、夏の明るい日射しの元ではおどろおどろしさは
微塵も感じないけれど、こわごわ覗いてみたりして。
何故かコインがいっぱい投げ込まれていました。

皿屋敷_2_S.jpg

実は、お菊さんの伝説の方が姫路城より古く、本当のお菊井戸は、米朝ばなしによると
姫路城下町東側の五軒邸という地区のさるお寺にあったとか。
また、『六臣譚筆』という史書には五軒邸地区竹の門付近に小幡久郎衛門という人の
お屋敷があり、そこにお菊さんのお墓があったとされています。

皿屋敷_4_S.jpg

皿屋敷_3_S.jpg

姫路城下南西の十二所前町にある十二所神社の境内にお菊さんをお祀りしたお菊神社があります。
由緒によると、お菊は実は尼子十勇士のひとり、寺本障之介の娘で文武両道に秀でた美女であり、
姫路城主小寺則職に仕えておりました。重臣であった青山鉄山と町坪弾四郎は城主暗殺、
お家乗っ取りを企んでいましたが、それがお菊にばれてお菊を亡き者にしようと画策。
小寺家家宝の皿の一枚を隠し、その紛失の罪をお菊にかぶせて責め殺し井戸に投げこんでしまいます。
謀叛はやがて露見して則職は一味を成敗。お菊を神としてお祀りしました。
境内にある碑には『烈女お菊』と刻まれています。
お菊は幽霊などではなく、主家を陰謀から救った忠義の美女なのでありました。

チュンチュン

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posted by 庭乃雀 at 21:58| Comment(0) | 兵庫編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする